昨年亡くなられた間宮さんの1990年の著書です。
新書なので、「現代音楽」というジャンルを総括するような本なのかと思ったら、実は間宮さん自身の作曲へのアプローチを語ったものでした。新書としては異例の内容ですが、もちろん価値ある記録だと思います。
プロローグは、津軽での子供時代に著者が見聞きした「節付きの朗読」から始まります。そこから少し日本旋法の話に展開した後、この朗読と「いたこの口寄せ」の類似点が指摘されます。もうこのあたりから、バックグラウンドが濃いな!と感じますね。間宮さんは1929年生まれですが、当時でも都市部に生まれ育った人では、このようなバックグラウンドは持ち得なかったのではないでしょうか。
本文では、間宮さんが作曲家としての出発点として民俗音楽を選んだことから始まり、映画音楽との関わり、ポーランド現代音楽から受けた衝撃、ジャズへの傾倒(「多分に政治的だった」と述懐されています。本書108ページ)、「足の裏の音楽」(音楽の肉体性、とでも言えばいいのでしょうか)、東西のリズム、などについて、それぞれ議論が提示されます。
内容は多岐にわたっており、私には十分に理解できない部分があまりにも多いのですが(とにかく前提になっている体験が足りなすぎる)、「東のリズム、西のリズム」で書かれている「加速またぎとゆっくりまたぎ」の話は、DTMでの楽曲作成に通じるものがあると感じました。演奏家はテンポの調節を感覚的・身体的にやっていますが、DTMで楽曲作成する時はテンポを数値化しないといけません。今さらではあるけど、今後の楽曲作成では、この辺りをちょっと意識的に考えてみようかなと思っています。