刈谷市総合文化センターで観劇してきました。先日原作を読んだのは、このための予習だったわけです。本格的な演劇を見るのは初めてです。
幕が上がって、舞台上に何の飾りもなく、役者さんが椅子に座った状態で劇が始まったので、まず驚きました。本作の最初は王の屋敷での場面ですから、それっぽいセットが組んであるだろうと思っていたのです。真っ白な背景は、紙であることがあとでわかります。舞台上に置かれたオーバーヘッドプロジェクターで、王国の地図や、何度か重要な場面で登場する「手紙」が映し出されるスクリーンにもなります。また、劇の進行の中で、俳優さんがそこにマジックで書き込みをする演出もあります。これらは、「斬新な演出」ということになるのでしょうか? 出演者の方々は「今までに見たことのない『リア王』を見てください」とおっしゃっているそうですが、私はそもそも「リア王」の舞台を見るのが初めてなので、どこが新しいのかはよくわかりません。ただ、「こんな演出のやり方ってアリなんだな」と、たいへん興味深く見ました。
予習していたので、ある程度劇の進行は理解できましたが、長いセリフは追い切れないことが多かったです。セリフが長く複雑で、しかも俳優さんが早口で話されるためです。あと、グロスター伯の庶子であるエドマンド(玉置玲央さん)は重要な役柄ですが、場面ごとに演じる立場が細かく変わるため、「えーと、今話してる相手は誰だっけ? どういう立場で話してるんだっけ??」とこちらが戸惑っているうちに、話が先に進んでしまうこともよくありました。ちょっと予習が不足してたかなあ。最後の方でエドマンドをゴネリルとリーガンが取り合いますけど、原作を読んだ時も、なんでそうなるのかイマイチよくわからなかった。「あんなしょうもないヤツやめとけや……」と言いたくなりません? ちゃんと読んだらその必然性が理解できるのかなあ。
主演の段田安則さんは、さすがの迫力でした。ゴネリルの江口のりこさん、リーガンの田畑智子さんも、腹黒な2人の娘を見事に演じておられました。ポスターなどでいかにも悪いやつっぽく写っていて、ちょっと気の毒な感じもしたんですが、まあこれだけ実績のあるお二人だからこちらが心配するのは野暮というものでしょう。そこへ行くと、コーディリアの上白石萌歌さんは「おいしいとこ」を持って行ってる感じですね。終演後もお客さんの間で「萌歌ちゃん可愛かった〜」と声が上がってましたけど、まあそういう役柄ってことですよねえ。あと、ケント伯の高橋克実さん、道化の平田敦子さんは、ずっとリア王に忠義を尽くす役として、印象に残ったし、存在感も大きかったです。