昨年のハマースによるイスラエル攻撃と、その後のガザ地区へのイスラエルの侵攻を受けて、もっとパレスチナのことを知らないといけない、と強く感じました。とりあえず全体像を見ようと、この本を手にとりました。
読むのに2ヶ月ぐらいかかりました。多数の専門家が様々な角度からパレスチナを論じています。60章を1冊に収めるため、各章は短い中に多くの情報が詰め込んであり、なかなか理解しきれません。この問題の初心者には少し難しすぎたかな。まずはパレスチナを巡る歴史・政治の流れを先に学ぶ必要がありました。この本はそういう知識をすでに持っている人が対象になっているようです。
ただ、実際にパレスチナの人々と交流した体験も多く紹介されているので、歴史的な流れとは別に、パレスチナの人々の「生きる姿」を垣間見ることができるのは、この本の強みでしょう。「余談」的な位置付けではありますが、パレスチナ系アメリカ人のコメディアンの紹介はちょっと笑えました。
「私は33歳で結婚したけど、……脳性麻痺を持つ私の体はブーケをキャッチするには不便だけど、トスの方は得意よ。パレスチナ人は、何かを投げるっていうのが上手いのよ。石とかね」(ガザ出身の男性と結婚した女性コメディアン)
「2013年のボストンマラソンで爆破事件があった直後なんだけど、……(自分の "Support Boston" というTシャツを見て白人が)鼻で笑うんだ。……『ムスリムだろうがアラブだろうが、ぼくらにだってこの国で自由に生きる権利はあるだろ!』って怒鳴ったんだ。そしたら『いや、そうじゃなくて、あんたその体でマラソン走りそうにないなって』だって!」(大柄な体がトレードマークの男性コメディアン)
(本書207ページ)
本書は2016年の出版なので、アメリカがイスラエル大使館をエルサレムに移転したり、UNRWAへの拠出金を停止したりした経緯は述べられていません。もちろん現在進行形のガザ侵攻についてもです。パレスチナ問題について理解を深めることで、「軍事的・経済的に圧倒的な強者から蹂躙を受けている時、どのような抵抗が可能なのか」に思いを馳せて、可能な支援について考えたいと思うのです。日本の国力が急激に衰退している現在、これは全く他人事ではありません。