2022年09月10日

映画「荒野に希望の灯をともす」

 名古屋のシネマスコーレで見てきました。51席のミニシアターですが、8割ぐらいは入ってたんじゃないかな。

20220910-1.jpg

 パキスタン・アフガニスタンの国境地帯で医療と用水路建設に尽力した中村哲氏のドキュメンタリーです。中村氏の活動については大まかには知っていました。しかし、改めて映像で見ると、「アフガニスタンの砂漠地帯に用水路を建設する」というのが、どれほど途方もない事業なのか、思い知らされた。土木工学の知識が全くないところから、こんなことが実現できた、ということが、驚異的というほかない。

 活動の初期に、診療所を作るために地域の長老会と話し合う場面がある。長老の一人は「気まぐれに支援して、そのうち去ってしまうのではないか」と懸念を示す。中村氏は「自分が死んでも診療所が続くようにする」と答える。現地の人々の信頼を得るというのは、こういう作業の積み重ねなのだろう。その実績がなければ、用水路を作るという危険な大事業に、あれだけの現地の人々が協力するわけがない。

 用水路が完成して、住民が戻ってきた地域で、モスクで授業を受ける子供たちのシーンがあった。ランドセルを使っている子供たちもいた。あれはきっと「海を越えたランドセル」だろう。

(クリックすると Amazon の商品ページに飛びます)

 授業を受けているのは男の子ばかりだった。これを見ると、「女子教育はどうなっているのか?」という別の感想も生まれてくる。しかし、中村氏はおそらくそこには踏み込まない。そこに生きる人々が、自分たちの価値観でまず「生きる」ことが大事なのだ。

 中村氏は、最後は何者かによって銃撃され、命を落とす。あれほど現地の人々に信頼され、尊敬されていたにも関わらず、である。この映画は、銃撃事件については何も論評しない。事件については、朝日新聞が特集記事にしている(「実行犯の『遺言』 ~中村哲さん殺害事件を追う~」、2021年6月)。無料部分しか読めてないのだけど、身代金目的で誘拐しようとしたが、行き違いで殺害に至ってしまった、ということらしい。

 パンフレットに寄せられた、フォトジャーナリスト安田菜津紀さんの「この映画を見て、ともに考えたい。『中村さんよくやったね』『大変だったね』の、その先を。」という短い言葉が印象に残る。中村氏と同じことはできないかもしれないけど、中村氏が何を考えたかを学んで、できることをやっていきたい。

タグ:映画
Posted at 2022年09月10日 19:37:46
email.png