2020年11月29日

77歳のアルゲリッチ

 YouTube で音楽を聴いていたら、お勧めに偶然これが出てきたのですよ。

 2年前、2018 年の「シンガポールピアノフェスティバル」での、マルタ・アルゲリッチの演奏。彼女の十八番、スカルラッティのソナタ K.141。若かりし日のアルゲリッチと言えば、聴き手も共演者も置いてけぼりでひたすら猪突猛進、というのは偏見かな。でも、御年77歳でも、あんまり変わらないじゃないですか。反則的なスピード感。

 で、これも出てきた。ドビュッシーの「版画」より、「グレナダの夕暮れ」。アルゲリッチとドビュッシーってちょっと意外な組み合わせなので、どうなんだろうと思ったら、妖しげな雰囲気が妙にマッチしている。

 たいへん失礼だけど、今のアルゲリッチの風貌が、なんかそのまま「マクベス」の魔女役やってもハマりそうな感じじゃないですか。それで、このあたりのパッセージが、普通は「気だるい夕暮れの雰囲気に少し風が吹き込む」感じで行くのに、アルゲリッチおばさんはすごいスピードで突っ走るもんだから、なんだか早口でよくわからない呪文をかけられたみたいになっちゃうんですよ。不思議な体験。

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 上の2つは実はアンコールなんです。ソロ曲なのに後ろにオーケストラがいるから、そうだとわかる。メインは何だったかというと、これまた彼女の十八番の、これなんですよね。プロコフィエフのピアコン3番です。

 率直に言うと、オーケストラ (Singapore Symphony Orchestra) はあまり上手くない。特に木管が微妙(ピッコロはうまい)。77歳のソリストは、若きオーケストラをぐいぐい引きずっていく。と同時に、要所要所でオケに合図を送ってます。決して独善的に突っ走るだけではない。

 YouTube のコメントで、「まるで作曲者は彼女(アルゲリッチ)のためにこの曲を書いたみたいだ」と言っている人がいた。ほんとにそうですね。この歳にして、この難曲を弾ききるパワーもすごいし、「これからの音楽家」と共演するオープンマインドも素晴らしい。まだまだ活躍してほしいですね。

タグ:音楽
Posted at 2020年11月29日 20:04:12
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