あけましておめでとうございます。お正月休みに、この本を読了しました。
2016年ベルリン国際映画祭で「映画化したい一冊」に選ばれた、抱きしめたいほどかわいくて切ない友情物語!
AI(人工知能)の開発が進み、家事や仕事に従事するアンドロイドが日々モデルチェンジする、近未来のイギリス南部の村。...ある朝、ベンは自宅の庭で壊れかけのロボットのタングを見つける。「四角い胴体に四角い頭」という、あまりにもレトロな風体のタング。けれど巷に溢れるアンドロイドにはない「何か」をタングに感じたベンは、彼を直してやるため、作り主を探そうとアメリカに向かう。そこから、中年ダメ男と時代遅れのロボットの珍道中が始まった……。
「英国版ドラえもん」という評もあるみたいだけど、それはちょっと(かなり)違うかな。タングは幼児のようにひたすらに駄々をこねるだけで、何かをしてくれるわけではない…少なくとも物語の最初の方では。最後の方になると、いろいろと不思議な能力を発揮するようになり、それが物語の推進力になっていくのだけれども。
「タングがかわいい」というのは確かにその通りだが、それと同程度に印象深いのが、「中年ダメ男」ベンの優しさ。単に底抜けにお人好しなだけ、という話もあるけど。この2人 (?) なら、周りにどんな厄介ごとが起きてしまっても何となくやり過ごしていけそうな感じじゃないか。実際、最後はそうなっているし。
著者は、本作が作家デビューだそうです。書き進めるのが楽しくてしょうがなかったんじゃないかな。ちなみに、作中に出てくる東京の街の描写がなかなか秀逸だった。地下鉄の中で乗客がタングを取り囲んで一緒に写真を撮りたがる場面など、さもありなん、という感じ。それに比べて、サンフランシスコの描写は今ひとつ腑に落ちなかった。アメリカ西海岸ってこんなのかなあ。もうちょっとフレンドリーなイメージがあるけど、最近はそうでもないのかな。