話題の映画「この世界の片隅に」を妻と2人で見てきました。
終わった後、しばらく言葉が出なかった。無言で余韻に浸りたかった。
戦時中の日本、戦況が悪化する中でも健気に生きてきたすずさん。度重なる呉への空襲で、すずさんが失った「大切なもの」って…それだったの!? 嘘だろ…?(今改めて泣けてきた)
そんなことがあっても、この話はお決まりの反戦イデオロギーには流れて行かない。あくまでも、当時に生きた民間人たちの、等身大の物語を語り続ける。「あの戦争がなければよかったのに」なんてことは誰も一言も言わないのだ。それが、当時の呉の町に生きた人たちのリアルだったのだろう。
片渕監督の前作、「マイマイ新子と千年の魔法」は DVD で見たけど、これもすごく好きだった。でも、一体何がどうよかったのか、結局わからずじまいだった。今回、監督が以下のようにコメントしているのを見て、少し得心が行った気がした。
自分たちが作れるのは映像まででしかなくて、「映画」として完成するのはお客さんの心の中でなのだと思っています。枠に切り取られた映像でしかないものの外側まで感じられれば、お客さんの心の中でどこまでも拡がっていける映画が作れると思うんです。
徹底してすずさんの視点で(「マイマイ新子」では新子と貴伊子の視点で)周りの世界を切り取ってみせることで、見ている私たちの心の中で、映像に映っていない物語が自然に広がっていくんじゃないか。そして、その物語が心一杯に広がったところで映画は終わり、物語の続きは各自に任される。エンドロールで暗示されるすずさんたちの新しい生活が、余韻として心に残る。
そのエンドロールだが、前半に製作スタッフ、後半にクラウドファンディングの出資者がクレジットされていて、すこぶる長い。でも、必ず最後まで見なくちゃいけない。なぜなら、最後にとても印象的なワンカットがあるから。帰りの道すがら、妻も同じところを見ていたことがわかった。
今回は客の入りは6割ぐらいだったかな。夫婦で見ている人が多かった。これは確かに、それにふさわしい映画だね。