日経新聞の記事、「米で特許 再現成功で『常温核融合』、再評価が加速」。ビジネスパーソンにとっては「特許がとれた」=「価値ある成果」ということになるのだろうけど、本当に宣伝通りの成果なのかどうか、どうも疑問が残る。この記事で紹介されている実験内容を見る限り、熱が発生するのは当然で、核反応ではなく重水素と金属の普通の化学反応熱が出る。ニッケル・パラジウム・白金の10族金属は特に水素や重水素と強い結合を作る。また、ナノ構造を作った方が反応熱が大きいのも、化学分野では普通に知られている現象で、それ自体に新規性は全くない。ここでの最大の問題は、ヘリウムが有意な量生成しているのかどうか。記事によれば、ある実験結果ではヘリウムが確かに検出されているようだけど、その実験に再現性があるのか、不純物などの影響ではないのか、というところが決定的に重要。この点を追求しないと、本当に価値のある成果とは言えない。
ビジネスパーソンの皆様におかれましては、この手の研究で「ヘリウム生成量の再現性や精度」について突っ込んだ議論をしない研究者は、あまり信用しない方がよろしいかと思います。もっと有効な投資先を探した方がいいでしょう。研究者のみなさまにおかれましては、「熱が出た」ことなんてどうでもいいので、ヘリウムが発生したかどうか、また核反応の余剰エネルギーが放射線で検出されたかどうか、ということをちゃんと検証してください。そうでないと、信頼に値しない与太話になってしまうから。
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