ソフトボール世界選手権、少しだけ見ました。北京オリンピックの金メダルが印象に残っていますが、もう10年前のことなんですね。その時のエースの上野投手が、今でもエースって、どういうこと?
決勝戦の米国戦。米国は投手5人で10回を戦っているわけですよ。それに対して上野は1人で10回。しかも、真夏のダブルヘッダーで、第一戦も完投している。この条件で、最後までもつれる・勝つチャンスすらあった、ということ自体は大したものだと思うけど、戦い方としてはむちゃくちゃ不合理じゃないですか。北京オリンピックの時に、上野投手が「最後は気持ちの強い方が勝つと思った」と言ってました。それはそうだと思う。でも、十分に合理的な戦い方をした上で、気持ちの強い方が勝つ、という話に持っていかないといけない。それが指導者の役割じゃないですか。
自分も北京オリンピックの時は「感動」してたから、あんまり偉そうなことは言えないけど、上野投手の「熱投」を美談にしたらアカンと思います。なんで日本チームは、この大事な試合で、力のある投手をローテーションしながら総力戦で戦う、というやり方ができなかったのか。そういう視点が必要なんじゃないですか。「上野投手の後継者を育てる」とか言っても、「一人で2日間400球以上投げても壊れない」人を育てる、という発想ではダメだと思う。
もう一つ思ったこと。実家に帰省してテレビで準決勝米国戦を見ていた時に、父が「アメリカの選手は服装がきちんとしてない、日本はそういうところがちゃんとしている」と言っていた。もちろん日本の方が上だ、という意味です。私は改めて一人で決勝戦を見ながら、全く逆のことを考えていました。アメリカの選手は服装も髪型も思い思い。日本の選手はみんなショートカットで、ユニフォームの着崩しもなくて、「規律を守る」ことがチームカラーになっている。今の日本の若手選手が、こういう環境で伸びるんだろうか?
今の10代・20代のトップアスリートの人たちって、精神的にとても自由で、しかも強い心をもっているじゃないですか。こんなことを言うとソフトボールの関係者にとても失礼だとは思うんだけど、本来は力を持っている人材に、競技自体が敬遠されたりしてませんか。若手が伸びてこないのって、そのせいだったりしませんか。あの「高校野球」ですら、少しずつ変わってきているんです。ソフトボールも、変わっていってもいいんじゃないかな、と思う。東京オリンピックには間に合わないかもしれないけど、ソフトボールが好きな子供たちのために、選手がのびやかに育って力を発揮する、という環境を作ってあげてほしいな、と思います。