新着雑誌をチェックしていたら、Angewandte Chemie にすばらしいエッセイが載っていた。"Try and Fall Sick …"—The Composer, Chemist, and Surgeon Aleksandr Borodin (Prof. Dr. Joachim Podlech 著)。アレクサンドル・ボロディンの作曲家・化学者としての業績をまとめたもの。
「化学者としてのアレクサンドル・ボロディンは、今日の化学者にはほとんど知られていない、さらに(残念なことに)作曲家としてすら知られていない」
…まあ確かにそうかも。小学校(中学校?)の音楽鑑賞で「中央アジアの草原にて」が出て来たような気はするけど。
以前から気になっていた「ボロディンがアルドール反応を発見した」という説、どうやら本当らしい。1864 年にボロディンが J. Prakt. Chem. に発表した論文が最初だとのこと。僕の友人(化学者で音楽愛好家)はかつて、ボロディンがハンスディッカー反応を最初に発見したことに言及して、「でもボロディンは作曲をやって正解だった、なぜなら『中央アジアの草原にて』は小学生でも知っているがハンスディッカー反応は有機化学者しか知らない」とのたもうたが、アルドール反応の発見者でもあるのだったら少しはその評価も変わるかな。いや、アルドール反応だって有機化学者しか知らないから同じことか。それに結局、どちらの反応も別の人によって再発見されているわけだしな。Podlech 博士も書いている:
「ボロディンは驚くべき密度の(音楽)作品を残した。ほとんどすべてが高い質で、後継者に重要な影響を与えた。化学者としては、彼はいくつかの有名な反応を最初に発見したが、もし彼がいなかったとしても、長い目で見れば化学は同じように発展したであろうと言わざるを得ない。」
ボロディンの作品に関して僕が一番おもしろいと思っているのは、ラヴェルの小品「ボロディン風に」。確かにボロディン風に聞こえる、ような気がする。どこが、と言われると困るんだけども。ラヴェルはボロディンの作品をよく研究していたことがわかる。