レニングラード国立歌劇場来日公演「イーゴリ公」を見てきた(名古屋市民会館大ホール)。生でオペラを観るのは初めて。A席で2階の4列目だった。左の端の方だったのでステージの左奥は見づらかったが、ピットがよく見えるし、音響も問題ない。主役級の歌手(バリトン3人、ソプラノ1人)は、みな声も演技も迫力満点。特に男性3人はロシア人らしいごっつい図体で、体格も役づくりのうちだな、と思った。また、合唱がみごと。ちゃんと演技をしながら(時には観客に背を向けながら)歌っているのに、ちゃんと統率のとれたコーラスになっている。オケは、序曲がずいぶんあっさり目の演奏で少し拍子抜けしたが、舞台が進むにつれてどんどんヒートアップしていく。弦は少し薄め。管は「うまい」という印象ではないが、パワーがあって音が個性的。ボロディンの音楽は管の音色がすごく大事なので、このオケはよくはまっている。だったん人、じゃなくて「ポロヴェッツ人の踊り」はとりわけ素晴らしかった。とにかくテンポがむちゃくちゃ速くて、木管(特にピッコロ!)が張り切りまくっていた。ところで、この場面ではダンサーが踊るのだが、こちらはちょっとイマイチだった。悪くはないんだが、もうちょっと華やかに大立ち回りをやってほしかったな。全般的には満足。16,000円の価値は十分あった。
パンフレットも買った。ボロディンについての解説があったのだが、化学者としての活躍を紹介するのに「ボロディン反応という名前が今でも残っている。ハンスディッカー反応と呼ばれることもある」とか「求核付加反応であるアルドール反応を最初に発見したとも言われている」とかえらい細かいことが書いてあって驚いた。Wikipedia のボロディンの項目にはこれらの記述があるから、ひょっとしてここから引用したのかな? アルドール反応を発見した(グリニャール反応という説もあるらしい)という話は時々聞くのだが、出典がわからない。(ボロディン反応は Merck Index の人名反応のところに載っているし、僕は原論文を読んだこともある。)