2025年08月27日

現代日本の学校吹奏楽の危機

 東洋経済education×ICT に、学校吹奏楽に関する論考が掲載されています。著者は、北海道教育大学の渡郶(わたなべ)謙一氏です。

東洋経済education×ICT

吹奏楽コンクールの演奏が"芸術的でない"理由、「少子化」を前に改めるべき慣習とは | 東洋経済education×ICT

部活動地域展開を吹奏楽の視座で論じる記事も、3回目となった(1回目、2回目前編、2回目後編)。筆者はこれまで、自身の大学紀要を刊行したり、吹奏楽関連団体合同会議を主催するなど、早い時期から文化庁が発表した「部活動地域展開ガイドライン」の考察や対処への促進活動を展開してきた。

(2025年08月25日 04:00)

 1回目までさかのぼって読みました。なかなか読み応えがありました。吹奏楽コンクールに関する問題意識は、吹奏楽関係者の間ではすでに共有されていたのかもしれませんが、一般人の目に触れるメディアでここまで踏み込んで論じられるのは珍しいのではないでしょうか。

 特に私が意を強くしたのは、「第2回(前編、後編)」で論じられている、以下の点です。

そもそも吹奏楽作品は、吹奏楽従事者以外にほとんど知られていない、という事実がある。…(中略)…だが吹奏楽作品には、そのような(引用者注:クラシックの有名作品のような)高い芸術性を含有した、人間の進化を涵養する芸術的栄養にあふれるものが多くあるとは、悲しくも言いがたい。

【前編】日本の吹奏楽部が抱える「感性の危機」?プリンシプルなき地域展開が招くもの
(2025年06月09日 04:00)

吹奏楽関係者にはつとに知られているが、ここ十数年、コンクール課題曲の劣化は目に余るものがある。これに関して指揮者の下野竜也氏は、管楽器専門月刊誌『パイパーズ461号』(2023年3月休刊)で、「近年の課題曲は酷いものが多すぎる。一般公募で良いものはほとんど見当たらない」と強く語っている。

また、吹奏楽作曲家として知られる鈴木英史氏においても、「音楽的深みを見出せる、音楽的課題を投げかける委嘱作品が敬遠される傾向にある」と、吹奏楽専門雑誌『バンドジャーナル』の担当コラムの中で危機感を募らせている。さらに作曲家の伊藤康英氏は自身のSNSで課題曲の質の低さについて詳しく言及し、「明らかな和声の誤り、全体の調性の構造のアンバランス、メロディと対旋律とのぶつかり方の明らかなミスがある」と指摘している。

【後編】吹奏楽コンクールの審査基準や指導法に違和感、地域展開で「音楽基礎教育」が必須な理由
(2025年06月09日 04:01)

 伊藤康英氏のご発言は最近のものでしょうか。すでに2015年に Facebook にこういう書き込みをされていました。

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 私はけっこう感動して、こんな文章を書きました。今回の渡郶謙一氏の論考を読んで、自分の考えはそう的外れでもなかったんだな、と少し安心しています。

Digitalians' Alchemy

吹奏楽コンクールと教育的効果

 Facebook で、吹奏楽コンクール課題曲に関する伊藤康英さんの書き込みが回ってきた。……ああ、さすが伊藤さんだ。「子供たちの耳を悪くするおそれのある音」を排除したい、という志が本当に心強い。

(2015年07月28日 23:32)

 コンクールの課題曲を一般公募するのはやめてほしいですね。多くの中高生が長時間取り組んで演奏する曲ですから、技術的難易度は控えめで、芸術的な価値の高いものであってほしい。それを書けるのは、十分な実績を持つ作曲家の先生しかいないでしょう。

Posted at 2025年08月27日 00:25:08
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