先日、所用で大阪に行ったときに、ヤマハなんば店に行ってみました。昔よく通ったヤマハ心斎橋店が移転した店です。
楽譜・楽書売り場は1階、と聞いたんだけど、建物の外からは、ギターやドラムばかりが見えます。改装したんかな?と思って入ってみたら、フロアの奥の方にちょこっとだけ楽譜・楽書コーナーがありました。え、たったこんだけ??
単にスペースが狭いだけでなくて、品揃えもずいぶん様変わりしていました。ピアノ曲のコーナーは、小中学生ぐらいが手がける曲集が中心です。オーケストラスコアも、全音・日本楽譜出版社のポケットスコアが中心。輸入譜は Dover しかない。要するに、ライトな人が食いつく路線しか揃えてないんですね。これは割り切りましたね……。
前にも一度書きましたが、私は楽譜店に大いなる思い入れがありまして、その中でもヤマハの心斎橋店は特別な存在でした。広いフロアにたくさん楽譜が並んでいて、いくら見ていても飽きませんでした。品揃えのユニークさで言えば梅田のササヤ書店の方が上だったけど、あそこは狭くて長時間逗留はちょっとしんどいですからね。
ヤマハはもう、大阪ではライト層以外はターゲットにしない、と肚をくくったようですが、ほんとにそれでいいのかな? もちろん、最初は誰でもライト層からスタートするわけですが、そのそばに「なんかよくわからないもの」が置いてあれば、一部がそれに惹かれて、「趣味の多様性」が広がっていくことにつながると思うんですけどね。このような動きはメインストリームではないがゆえに、ビジネス的な観点からは「無駄」と見られてしまいがちで、その「無駄」を許容する余裕がなくなっている、ということなのかもしれません。でも、そうやって「よくわからないもの」に惹かれていった人が、いずれはコンサートに足繁く通ったり、ヤマハのバスクラを買ったり(笑)、するんじゃないんですかねえ。それって音楽業界にとって無駄ではない気がします。他ならぬヤマハが、そういう流れを手放してしまっていいのかな?
ちなみに、昔ヤマハ心斎橋店があった心斎橋筋のアーケード街も歩いてみましたけど、すっかりつまらない街になってしまっていました。にぎわってはいるけど、6〜7割が外国の人で、お店はそういう人をあて込んだ、なんだか安っぽいものばかり。GUCCIとかCalvin Kleinの店舗もあるので「安っぽいものばかり」と言っちゃ怒られるかもしれませんけど、こういう店も周りの雰囲気に馴染んで、すっかり安っぽく見えます。昔は心斎橋のアーケード街は、梅田やなんばとはちょっと雰囲気が違っていて、特に高級というわけではないけど、落ち着いた大人の気品があったんですよね。心斎橋の駅から、大丸の前を通って、ヤマハまで行く道のりって、好きだったんだけどなあ……