話題の本、読みました!
圧倒的なのは、とにかくスピード感ですね。ものすごい勢いで言葉があふれ出してくる。それと、現実とかけ離れた奇想があちこちに散りばめられていること。同じような名前の人物が次々と登場して、誰が生きていて誰が死んでいるのかも途中でよくわからなくなってくる。冒頭が「長い年月が流れて銃殺隊の前に立つはめになったとき、」と始まるので、ああきっとこの人物が物語終盤で銃殺されるんだろうな、とうっかり思ってしまったのだけど、ぜんぜんそんな(ありがちな)展開じゃないんですよね。年表とかを作っていけばもっとよく理解できるんでしょうか。この作品への入口としては、そういうマジメな読み方よりも、スピード感に身を任せて一気に読む方が合ってるような気がします。
途中でフランス・イタリアなどの西欧の国や、アメリカ合衆国の地名などが出てくると、なんか妙な生々しさを感じます。「蜃気楼の村」マコンドはもちろん架空の地名で、そこで繰り広げられるストーリーは現実感のない幻想という趣なんだけど、馴染み深い地名が出てきた瞬間に、「この世界って現実とつながってるの??」と戸惑ってしまう。これが「マジックリアリズム」の効果なんですかね。
巻末の筒井康隆氏の解説に、大江健三郎「同時代ゲーム」と井上ひさし「吉里吉里人」がマルケスの影響を強く受けていることが指摘されています。筒井氏の「虚人たち」「虚航船団」もそうだそうです。「虚人たち」は未読だけど、他の三作については、なるほどと思うところはあります(今気づいんたんだけど、「虚構船団」じゃなくて「虚航船団」なんですね)。ガルシア=マルケス作品の中で、筒井氏のお気に入りは「族長の秋」だそうです。「族長の秋」はだいぶ昔に文庫化されています。半分ぐらい読んで挫折した記憶があります。そもそもなんで読もうと思ったのかな? この作品も、文章のスピード感はすごかったな。