フォーレの記念年ということで、1曲公開しました。Nifty-serve の FMIDICLA で SC-88 用に公開したもののリメイクです。PianoTeq Stage を使っています。
演奏は春秋社版の楽譜を使いましたが、動画に使っているのは IMSLP にある Hamelle 社の版です(パブリックドメイン)。IMSLP には自筆原稿もあるので、そちらも参照しました。自筆原稿は音しか書いてないところもけっこうあって、アーティキュレーションや強弱記号の指示は出版時に付け加えられたものが多いようです。
この曲は、主部が変ト長調で、中間部で嬰ヘ長調に異名同音転換するのが特徴です。この転調はバルカロールの第5番でも出てきます。
楽譜を細かく見ると、納得のいかないところがいろいろあります。この曲に限らず、フォーレの曲にはよくあることで、なんかアバウトに書いてるよなあ、と思うことが多いのです。たとえば、中間部でテーマが再現するところ(78〜79小節)。ディミヌエンドでピアノになるのはまあいいとしても(自筆原稿には指示なし)、左手の F# は1オクターブ下だろ、と思いますよね。
ニ長調に転調してからの106〜107小節、左手の F は F♭ちゃうの?と思うのですが……
自筆原稿を見るとしっかりナチュラル記号が書いてあります。1つ前の小節はフラットなので、ここは弾き分けないといけないようです。
その2小節あとの6拍目です。左手が C♭、右手が Cナチュラルで、ぶつかっているのがどうも気になります。
自筆原稿を見ると、右手には臨時記号ついてない! 右手は流れの中で、あまり重視してない感じです。音を変えてもバレないだろう、と今回はこっそり右手も C♭でやっちゃいました。
ちなみに、譜例最初の右手の A♭が複付点四分音符になっていますが、この記譜は誤りです(四分音符+十六分音符の長さになるのが正しい)。こういうところがアバウトだな、と感じるのです。いや、別にフォーレを dis るつもりはありません。そういう大らかさがフォーレの魅力でもありますからね。