ヘリウム不足、しばらく話題になっていなかったけど、また注目されているようです。
ヘリウムが入手できない!JAXAなど研究機関が“悲鳴” (ニュースイッチ)https://t.co/Scc7PjDWZA
— NewsPicks (@NewsPicks) 2019年6月7日
私は自分では直接液体ヘリウムを使ったことはないのだけど、装置のメンテナンスのために使ったことはあって、一応取り扱いに必要な知識は持っている。実は長いこと「ヘリウム回収配管」がある機関に所属していたので、ヘリウムって回収して再利用するのが当たり前だとなんとなく思っていた。でも、よく考えてみたらそんなわけないよな。回収するところまではなんとかなっても、ヘリウムの液化装置なんて維持がめちゃくちゃ大変だから、コストを考えると原則使い捨てにするのがむしろ当然だ。
今になって騒がれているのは、米国が 2021 年で国外へのヘリウム販売を終了するからだそうです。これ、大変なことですよ。病院の MRI どうするんだ。
それで、上記の日刊工業新聞の記事には一言も書かれてないけど、リニア中央新幹線どうするんだよ。営業運転には液体ヘリウムが継続的に必要だよね? といっても、必要な液体ヘリウムの量を試算したデータがなかなか見つからない。具体的な数字を出している数少ない例が、下のブログ記事。
2015年7月2日の参議院内閣委員会で山本太郎氏が質問した内容の一部を文字起こししたもののようです。「山本太郎」という名前で脊髄反射的に拒絶する人がたくさん出てきそうだけど(私も好きではないです)、この質疑の内容はよく練られている。この中で、「超電導磁石1組に液体ヘリウム数十リットル」「(山梨実験線で)7両編成の車両で超電導磁石は16個」ということなので、1編成に数百リットルの液体ヘリウムを積んでいることになる。
走行中に液体ヘリウムは少しずつ蒸発していく。JR 東海は回収再利用するつもりみたいだけど、そうなると蒸発したヘリウムガスを終点に着くまで車両ごとに貯めておかないといけない。液体ヘリウムは気化すると体積が700倍ぐらいになる。蒸発量をざっくり1%ぐらいだとすると、貯めておくヘリウムガスの量はまあ数千リットルぐらい? 実際には圧縮するだろうから、ボンベ数本分ぐらいにおさまりそう。この程度なら、走行中の蒸発分を回収することは、少なくとも技術的には可能そうだな。(この試算、「蒸発量1%」という数字には何の根拠もないので、真に受けないでください。)
回収・再液化がちゃんと機能すれば、ヘリウム資源の量についてはなんとかなりそうな気もしてきた。もっとも、それに必要なエネルギーの量を考えると、気が遠くなる。そこまで資源を投入してまで、リニア新幹線って走らせないといけないものなんですかね。「一応始めちゃったから最後まで行こうよ」的なノリでやってるような気がしてならない。今から凍結するなんて言ったら、各方面大ヒンシュクなんだろうな。でも、本当はやめてほしいけどな…