ベンター博士、CO2 を分解して燃料を生成する研究プロジェクト開始(technobahn)。これはいいですね。微生物を使うか完全に人工系でやるかは別にして、この方向の研究はもっと幅広く進めるべきだと思う。そもそも、石油・天然ガス・石炭といった化学燃料は、昔の生物が長い時間をかけて CO2 から作った有機物が元になっている。それをわれわれが盛大に消費して CO2 に戻しているために、大気中の CO2 濃度がじりじり上がっているわけだ。言ってみればわれわれは地球から膨大な借金(借エネルギー)をしていることになる。借りっ放しはいかんよ、ちゃんと返さんと。
この研究プロジェクトのポイントは、微生物の力をうまく利用して、炭素・炭素結合を作る点にあると思う。CO2 は炭素1個、オクタンは炭素8個だから、CO2 をオクタンに変えるには8個の炭素をつないでいかないといけない。かつて石油ショックの時にも同じような研究の必要性が叫ばれて、(当時はバイオ技術が今ほど発達していなかったから)純粋な化学プロセスで炭素・炭素結合を作る研究がずいぶん行われたのだが、成果がまだ上がらないうちに原油価格が元に戻ってしまい、この手の研究はすっかり廃れてしまった。まあこういう研究も(宇宙開発とかほどではないにしても)けっこうお金がかかるから、社会の要求度が下がってくると下火になるのは現実にはやむを得ない。でも、本当はこの CO2 の問題は全人類的な課題であり、産油国の政治情勢などの社会的要因とは独立して推進すべき研究だと思う。そういう貢献ができてこそ、科学技術で世界に胸を張れる国になれるんじゃなかろうか。ノーベル賞とかの数を目標にするんじゃなくて。
タグ:科学