2017年03月20日

「異性」(角田光代・穂村弘/河出文庫)

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 少し前から、穂村弘さんのエッセイにハマっている。「絶叫委員会」とか「現実入門 ほんとにみんなこんなことを?」とか。

 本書は、書名にある通り「男と女」について、二人の文学者が往復書簡の形式で語り合う。恋愛論なども面白いのだが、何より秀逸なのは、やはり話題が「ことば」に関わるときだ。こんな場面がある。穂村さんと、女性歌人Sさん・女性編集者の3人のシーン。女性編集者が穿いていた変わった形のスカートに目をとめた穂村さんは、こんな会話を始める。

ほ「それは、えーと」
編「バルーンスカートです」
ほ「あ、バルーンスカート」
編「はい」
ほ「バルーンスカート」
編「……」

 そのとき、穂村さんはSさんに「強い口調で」とがめられる。「繰り返したね、二回目の『バルーンスカート』は何?」 穂村さんは「何かを見透かされたようで恥ずかしかった」と書く。何を見透かされたのかは本文に譲るけれども、このくだりを読んだとき、二人の歌人の「ことば」に対する感度の強さにうならされた。もちろん、この編集者さんが感じたように、軽い不快の念を持つ、というところまでなら、普通の人でも持ち得る感想だろう(それさえも感じない鈍感な人もたくさんいそうだけど)。でも、それを「二回目の『バルーンスカート』は何?」という形で言語化する(Sさんの)感性、そしてそれをこの場で取り上げて自分の中の「見透かされた何か」を言語化しようとする(穂村さんの)感性が、さすがは歌人だな、と思わせるものがあった。

 といいつつ、私は穂村さんの歌集をまだ読んだことがないのです。読まなくちゃな。

タグ:読書
Posted at 2017年03月20日 21:23:09
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