「Ubuntu 上で DTM アプリを使ってみる」の続きです。Sforzando は十分使えますが、良い sfz ライブラリを探すのがなかなか大変そうです。自分が使ったことのあるプラグインを使用する手段は確保しておきたいところです。Wine と yabridge を使って Windows 用の VST を動かす、というやり方がよく紹介されています。やってみることにしました。
結論を先にいうと、Wine のバージョンを選ぶことがとても大事です。ここを見切り発車すると、めちゃくちゃ苦労する羽目になります(なりました)。これを書いている時点(2026年8月)では、最新版ではなく、「Wine 9.21-staging」をインストールすることが必要です。これより新しいバージョンの Wine は、yabridge の安定版で不具合を起こすことが開発者によって明言されています。
GitHub
obbert-vdh/yabridge: A modern and transparent way to use Windows VST2, VST3 and CLAP plugins on Linux
Wine 9.22 and Wine 10.x currently don't work with yabridge 5.1.1 or belong. You will either have to downgrade to Wine 9.21 for the time being, or install a development build of yabridge.
Wine 9.21 staging 版の Ubuntu へのインストール方法は、上記 yabridge の公式サイトに書いてあります。「時の案内人」さんのサイトにも説明があります(「Wine9.21-Staging 版をインストールする:DTMをする方向け!!!」から)。
Timelessberry 時の案内人
Linux mintでWindowsアプリを使う「WineHQ」の導入方法
「Wine」というソフトを使うことで、LinuxでもWindowsソフトを動かすことができます。Mac OS使ってる人は馴染みあるかも。
私はもっと横着なやり方をとりました。下の Reddit スレッドで書かれていた方法です。
reddit/linuxaudio
Downgrading winehq-staging to 9.21 on Kubuntu 25.04 (Plucky Puffin)
I recently installed a new machine with 25.04 and tried to install the working version of winehq-staging, but there's no pre-10.x package for plucky (https://dl.winehq.org/wine-builds/ubuntu/dists/plucky/main/binary-amd64/).
まず、以下のサイトから「wine-9.21-staging-amd64-wow64.tar.xz」をダウンロードしておきます。
GitHub
Releases · Kron4ek/Wine-Builds
Wine builds (Vanilla, Staging, TkG and Proton). Contribute to Kron4ek/Wine-Builds development by creating an account on GitHub.
そして、Ubuntu のレポジトリから winehq-staging をインストールします。その後、インストール先の /opt/wine-staging をリネームして、先ほどダウンロードした 9.21 の中身と入れ替えます。自動的にアップグレードされないように、apt-mark hold winehq-staging を実行しておきます。
$ sudo apt install winehq-staging
$ tar xfv wine-9.21-staging-amd64-wow64.tar.xz
$ sudo mv /opt/wine-staging /opt/wine-staging-11.15
$ sudo mv wine-9.21-staging-amd64-wow64 /opt/wine-staging
$ sudo apt-mark hold winehq-staging
Reddit のスレッドでの元発言の通り、"This is absolutely not the correct way to do anything, but I am lazy and it worked for me."です。まあ、これで動いたからいいんじゃないの、というところです。Wine を他の目的に流用するとたぶんややこしくなるので、要注意ですね。
winetricks をインストールしておきます。今回は、フォントのインストールにだけ使います。
$ sudo apt install winetricks
winetricks を立ち上げると、こんなウィンドウが出ます。最初に「Enable Silent Install」を選んで OK しておきます。こうしておかないと、警告が出るたびに OK ボタンを押すことになり、たいへん面倒です。
Default wineprefix を選んで次の画面に進み、「Install a font」から「allfonts」と「cjkfonts」をインストールします。
Garritan Personal Orchestra 5 をインストールしてみます。購入した時のダウンロードファイルを引っ張り出してきて、Windows 版のインストーラを見つけて、wine で実行します。
$ wine WIN_Garritan_personal_Orchestra_5.exe
動くやん! すげー!(注:インストーラが立ち上がっただけです)
無事インストールできました。次は、yabridge です。下記の公式サイトから直接 yabridge-5.1.1.tar.gz を持ってきます。
GitHub
obbert-vdh/yabridge: Release List
展開して $HOME/.local/share/yabridge に置きます。
$ tar xvzf yabridge-5.1.1.tar.gz
$ mv yabridge $HOME/.local/share
Wine 配下の VST の在り処を yabridge に教えて、sync(同期)させます。
$ cd $HOME/.local/share/yabridge
$ ./yabridgectl add "$HOME/.wine/drive_c/Program Files/Common Files/VST2"
$ ./yabridgectl add "$HOME/.wine/drive_c/Program Files/Common Files/VST3"
$ ./yabridgectl sync
動かしてみます! GPO5 のエンジンである Aria はマルチティンバー音源で、1つ立ち上げると 16 チャンネルまで演奏できます。これを Reaper で実現するには、プラグイン専用のトラックを作って Aria をアサインし、各チャンネルのトラックからこのプラグイン専用トラックにルーティングすればよいのです。 この方法は、下記の note で学びました。KORG M1 懐かしい。KORG のシンセは音が個性的で、憧れでしたね。私は M3R しか使ったことがないのですが、けっこう好きでした。
note(ノート)
ReaperでKORG M1をマルチティンバー音源として使う|戸塚こだま
説明用の覚え書き。 KORG M1の機能制限版、M1 Leは同時に1つしか起動できない。ので、複数トラックで使いたい場合、マルチティンバー音源として使う必要がある。そのやり方をM1でやってみたもの。おそらくLeでもこれでいけるのではないか…。 1.トラック準備 トラックを3つ作る。 test1→音源 兼 ティンバー1のためのMIDIを自らに送信する。 test2→ティンバー2のためのMIDIをtest1に送信する。 test3→ティンバー2の音声をtest1から受信する。 test1のFXにM1を読み込む。 2.音源の設定 test1のM1を開き、MULTIモードにする。
やってみました。Reaper で昔作った32トラックのデータをインポートします。SC-88でデータを作っていたときは、各ポートの初期化用に1トラック使うのが習慣でした。このトラックをプラグイン用に流用します。「FX」ボタンを押して、「VSTi: ARIA Player (Garritan)」を選びます。
アクティベートしてないので、当然警告が出ます。Garritan の公式サイトで、アクティベーションキーカードを用意しておいてください。
ARIA のウィンドウが開きます。どれかのチャンネルで「import」を選んで、キーカードを読み込ませれば、アクティベーションが完了します。
16個のチャンネルのそれぞれに楽器を割り当てます。ここは Windows や Mac 版と全く同じです。
次に、演奏情報を持つトラックのルーティングを設定します。トラック名の横の「ROUTE」を開き、「Add new send...」を選んで、送り先を「[A01]Initialize](先ほど ARIA のプラグインを設定したトラック)にして、MIDI チャンネルを「1」に指定します(この例では、プラグインのチャンネル1に指定した「Piccolo」音色にこのトラックの出力を送る、という意図です)。
他のトラックもルーティングを設定します。32トラックのうち半分は別のMIDIポートなので、もう1つ GPO5 のプラグインを立ち上げて、そちらにルーティングします。レンダリングしてみました。めちゃくちゃオーバーフローしてますね。プラグイントラックのボリュームを下げて改善します。
一応できました。アルベール・ルーセルの交響曲第3番第1楽章です。まだ FMIDICLA で活動していたころに、データだけは打ち込んであったものです。タイムスタンプは 1999/5/10 でした。再現部でソロヴァイオリンが出てきたあたりで、手に負えないなと思って、そのまま放置したと記憶しています。GPO5 のソロヴァイオリンもすごく良いわけでもありませんが、SC-88 よりはだいぶマシですね。楽器間のバランスがまだまだですが、とりあえず「Linux での制作第1号」として公開しておきます。

